「必死に生き抜ける。」 創世記20章1~8節

日本での暴動的な事件は、あさま山荘事件くらいでしょうか。連合赤軍による警官隊との壮絶な銃撃戦や鉄球による家の破壊は、暴力の恐ろしさを覚えました。日本人は、戦争や暴力をその後、あまり体験していません。世界では、暴動やテロは頻繁に起こり、殺人・暴力・銃撃戦は至る所で怒っています。アメリカでは身を護る為に銃を保持することが認められています。

中東のこの地域は、現在でも多くの紛争があり、一触即発の事態がいつでも起きそうです。表紙に載せた地域に住むベドウィン人は、外から来た人々には決して友好的ではありません。砂漠に住むということは、養える人数が少なく、頑健でなければ生きていけないということです。

アブラハムが自分の妻サラを妹とゲラルの王に言ったことを、多くの註解書と同じく、私も批判的に考えていました。この歳になるまで、私は妻子を守るために命懸けで生き抜いてきました。結婚以来43年、妻を守るために人生の戦いを奮闘してきたので、妻が今のように私を信頼してくれているのだと思います。妻もまた、私を守り、子どもを守り、教会を守るために必死に戦って来ました。5人の子どもを出産して、2人目からは1か月も産休を取っていないのではないかと思います。5人目の時は、12月21日(金)に出産して、24(祝)で25日に退院したら、代診の医師が来ていないので半日診察したことがありました。翌日は代診の医師が来て、その次から年末年始の休みに入り、正月明けにはしばらくして復帰したと思います。

健康だったというよりは、生活が懸かっていたからです。妻が働かなければ教会の家賃が払えず、生活費もなかったからです。夫婦ともに、「神様助けてください!」と必死に生きてきたのです。クリニック開業の時は、預金残高も持ち金もなく、どうしてかと銀行に尋ねられると、「教会を維持する為でした。」と答え、融資はもらえませんでした。

祈祷会の最中に湯沸かしポットを倒して主勢が大火傷をしました。それでも、祈祷会を続けてしまった愚かさを後悔し、火傷の跡を恥じて体操着を着ないことから発した主勢の非行は、すべて父親の責任と受け留めて5年間、立ち直らせようと奮闘してきました。地域の人々から責められ、息子の確認の為に毎晩2時まで夜回りをして身体を壊し、長く生きられないと感じて家賃の安いビルの裏部屋に教会を移したりしました。

その間、言い訳を言わず、弱音を吐かない私を責めて、多くの教会員が去っていきました。クリニックにも多くの問題が起こりました。人に話しても解決するものではないと覚悟を決めて生きるので、説教も厳しいものになったと思います。そして、卒業20年、未だ借室の教会堂であることを、自らの責任と受け留め、神にすがり悔い改めて、会堂を求めたのでした。

自分が命懸けで生きて来たのに、多くの批判非難があったことを思います。神は全てご存知だと言い訳をせず、また言い訳をすると信仰が薄れてしまうように思い黙ってきました。そんな時、このアブラハムの事件を思ったのです。

アブラハムは、ロトの住んでいるソドムの町が滅ぼされたのを見ました(創世記19・28)。ロトが生きているとは知りません。ただ、ロトを助ける為に命懸けで4人の王達と戦ったのにと絶望を抱いたかもしれません。アブラハムは、未だ安住の地を得ていない苦しさを持っていました。

多くの郎党を抱えながら長い年月旅をする疲れ、苦しさは大変なものです。彼は、ソドムから遠ざかり、ゲラルの地域に来ました。そこで、彼はその地域の人々が荒くれ者で頑健で好戦的であることに気が付きました。逃げたら負ってきて男は殺され、女は奴隷にされるでしょう。そこで、サラと話し合って、王に差し出すことにしたのです。

中東の荒々しさに住む人々は宗教的には熱心です。夢の中で語り掛けられた神の言葉に従い、さらを解放し、羊や牛の群れをアブラハムに与え、和解と神からの祝福を求めたのでした。

人生は長く、必死に生きて来ても、疲れ恐れ、人におもねってしまう時もあるものです。しかし、そんな時、神は信仰の人を助け救い出して下さるのです。

その後、サラは身ごもり、約束の子、イサクを産みます。アブラハムとサラの喜びはいかばかりのことだったでしょう。

神の祝福を体験するということは、簡単なことではありません。人の目や体裁を繕っていたら、神の祝福も、人生の戦いの勝利も得られません。

私たち夫婦の戦いも尋常なものではありませんでした。それならば、このまま引退してしまったら、神の御心を損ないます。長い人生の旅路は、強い信仰がなければ気力を保てません。アブラハムは、百歳にしてイサクを得ました。切りのない戦いかもしれませんが、神に従って必死に生きていこうと思います。

創世記20章1~8節

  • 20:1 アブラハムは、そこからネゲブの地方へ移り、カデシュとシュルの間に住んだ。ゲラルに寄留していたとき、
  • 20:2 アブラハムは、自分の妻サラのことを「これは私の妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは、人を遣わしてサラを召し入れた。
  • 20:3 その夜、神が夢の中でアビメレクのところに来て、こう仰せられた。「見よ。あなたは、自分が召し入れた女のために死ぬことになる。あの女は夫のある身だ。」
  • 20:4 アビメレクは、まだ彼女に近づいていなかった。そこで彼は言った。「主よ、あなたは正しい国民さえも殺されるのですか。
  • 20:5 彼が私に『これは私の妹です』と言ったのではありませんか。彼女自身も『これは私の兄です』と言いました。私は、全き心と汚れのない手で、このことをしたのです。」
  • 20:6 神は夢の中で彼に仰せられた。「そのとおりだ。あなたが全き心でこのことをしたのを、わたし自身もよく知っている。それでわたしも、あなたがわたしの前に罪ある者とならないようにした。だからわたしは、あなたが彼女に触れることを許さなかったのだ。
  • 20:7 今、あの人の妻をあの人に返しなさい。あの人は預言者で、あなたのために祈ってくれるだろう。そして、いのちを得なさい。しかし、返さなければ、あなたも、あなたに属するすべての者も、必ず死ぬことを承知していなさい。」
  • 20:8 翌朝早く、アビメレクは彼のしもべをみな呼び寄せ、これらのことをすべて語り聞かせたので、人々は非常に恐れた。