「4つの王国と神の国。」ダニエル7章1~10節

7章は5章の前の話で、バビロニア帝国のベルシャツァル王の元年(紀元前552年頃)にダニエルが見た幻のことです。

最初に現れた獣は、鷲の翼を付けた獅子のようで、2章と同じバビロニア帝国のことで、実際その遺跡の城壁には、その獣が掘られていたそうです。エレミヤは「獅子はその茂みから立ち上がり、国々を滅ぼす者はその国から出る。」(4・7)と預言し、「七十年の終わりに、わたしはバビロンの王とその民を、またカルデア人の地を、彼らの咎の故に罰し、これを永遠に荒れ果てた地とする。」(25・12)と終息も告げています。ダニエルは、その預言を知っていたので、バビロン帝国におもねることなく大胆に歩んでいます。

次に現れるのは、ユーフラテス川の流れを変える為に、密かに3年半も掛けて運河を掘り、バビロンを侵略したメディアとペルシャの連合軍です。「横ざまに寝ていて、その口のきばの間には三本の肋骨があった。」(5)のは、ペルシャの方がメディアよりも力が強かったこと、3本の肋骨とは征服したバビロンとリビヤとエジプトのことです。

「ひょうのようなほかの獣が現れた。その背には四つの鳥の翼があり、その獣には四つの頭があった。」(6)とは、敏速に動くアレキサンダー大王のギリシャですが、皇帝についた後の4年でエジプトもペルシャも滅ぼしてインドまで征服したのですが、32歳で死んだのでした。死後、4人の将軍により、マケドニア、シリヤ、エジプト、トラキヤに分割統治されたのです。これらの国の詳細な預言は8章に記されています。

「第四の獣が現れた。それは恐ろしく、ものすごく、非常に強くて、大きな鉄のきばを持っており、食らって、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは前に現れたすべての獣と異なり、十本の角を持っていた。」(7)とは強力な鉄の武器と軍隊を持っていたローマ帝国のことです。十本の角とは、皇帝の専制の下で領国の自治を許していたことで、フランク、アングロサクソン、ゴートなどの国々です。

ローマ帝国は、東西ローマ帝国に分かれ、東ローマ帝国は1453年にオスマン帝国によって滅ぼされました。西ローマ帝国は476年に滅んだかのように見えたのですが、神聖ローマ帝国として復活したとされて1806年まで続き、更にオーストリア・ハンガリー帝国が神聖ローマ帝国を引き継いだとしてハプスブルグ家が第一次世界大戦終戦まで統治し続けました。この間、「ローマ皇帝の戴冠」はローマ教皇によってされています。

実は現在まで続くヨーロッパの王政は、このローマ帝国やハプスブルグ家との関係もあり、ローマ帝国が完全に消滅したとも言えないところがあります。神の国はローマ帝国を「完全に絶やされ、滅ぼされる。」(26)とした後に実現するのです。

その前に再臨があり、「人の子のような方が天の雲に乗って来られ、年を経た方のもとに進み、その前に導かれた。この方に、主権と光栄と国が与えられ、諸民、諸国、諸国語の者たちがことごとく、彼に仕えることになった。その主権は永遠の主権で、過ぎ去ることがなく、その国は滅びることがない。」(13.14)となるのです。

そして、「幾つかの御座が備えられ、年を経た方が座に着かれた。」(9)とイエス様が裁きの座に着かれ、「幾千のものがこの方に仕え、幾万のものがその前に立っていた。さばく方が座に着き、幾つかの文書が開かれた。」(10)と神の裁きが始まるのです。

つまり、ダニエルは紀元前500年からの2500年以上の歴史を教えられ、神の支配と裁きを告げられるのです。ユダヤ人は、この歴史観を持ち、1950年後にイスラエルという国を再興したのです。

恐ろしい獣のような国々の略奪や殺戮があろうとも、神はそれらを見つめておられることを教えられるのです。現代に生きる信仰者は、そういう面では、終末の危機に一喜一憂してはならないのです。

「天の御国は、旅に出るにあたり、自分のしもべたちを呼んで財産を預ける人のようです。」(マタイ25・14)。「よくやった。良い忠実なしもべだ。」(23)と言われるか、「この役に立たないしもべは外の暗闇に追い出せ。そこで泣いて歯ぎしりするのだ。」(30)とされるかは、私たちがどのように生きるかに掛かっています。

新型コロナウイルスも、神の試みのように考えています。ダニエルらは、火の炉も、獅子の穴も恐れずに信仰を守り通しました。恐れた人は、神の守りを受けられず、それだけではなく、神の査定、裁きをも忘れて、間近な危険や危惧に怯えてしまったのです。人間はいろいろな言い訳をしますが、神はその心の底を見ておられます。だから、ダニエルは助けられたのです。見えない神を恐れ、「訓練として耐え忍びなさい。神があなたがたを子として扱っておられるのです。」(へブル12・7)

ダニエル7章1~10節

  • 7:1 バビロンの王ベルシャツァルの元年に、ダニエルは寝床で、一つの夢、頭に浮かんだ幻を見て、その夢を書きしるし、そのあらましを語った。
  • 7:2 ダニエルは言った。「私が夜、幻を見ていると、突然、天の四方の風が大海をかき立て、
  • 7:3 四頭の大きな獣が海から上がって来た。その四頭はそれぞれ異なっていた。
  • 7:4 第一のものは獅子のようで、鷲の翼をつけていた。見ていると、その翼は抜き取られ、地から起こされ、人間のように二本の足で立たされて、人間の心が与えられた。
  • 7:5 また突然、熊に似たほかの第二の獣が現れた。その獣は横ざまに寝ていて、その口のきばの間には三本の肋骨があった。するとそれに、『起き上がって、多くの肉を食らえ』との声がかかった。
  • 7:6 この後、見ていると、また突然、ひょうのようなほかの獣が現れた。その背には四つの鳥の翼があり、その獣には四つの頭があった。そしてそれに主権が与えられた。
  • 7:7 その後また、私が夜の幻を見ていると、突然、第四の獣が現れた。それは恐ろしく、ものすごく、非常に強くて、大きな鉄のきばを持っており、食らって、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは前に現れたすべての獣と異なり、十本の角を持っていた。
  • 7:8 私がその角を注意して見ていると、その間から、もう一本の小さな角が出て来たが、その角のために、初めの角のうち三本が引き抜かれた。よく見ると、この角には、人間の目のような目があり、大きなことを語る口があった。
  • 7:9 私が見ていると、幾つかの御座が備えられ、年を経た方が座に着かれた。その衣は雪のように白く、頭の毛は混じりけのない羊の毛のようであった。御座は火の炎、その車輪は燃える火で、
  • 7:10 火の流れがこの方の前から流れ出ていた。幾千のものがこの方に仕え、幾万のものがその前に立っていた。さばく方が座に着き、幾つかの文書が開かれた。