「心騒ぎ、眠れない時。」ダニエル2章1~10節

ダニエル書は前605年の、バビロニア帝国のネブカデネザル王がエジプト軍を撃退した年に始まり、バビロニアを滅ぼしたペルシャ帝国のクロス王がエルサレム神殿再建命令を出した537年に書き終わっています。アッシリア帝国は、609年にバビロニア・メディア連合軍によって滅びています。

この箇所では、ネブカデネザルの残虐さを非難する註解が多いのですが、国の盛衰が問われる大事な時に、無益な学問・知識を繰り述べる学者たちへの苛立ちとして理解されることができます。「あなたがたは時が移り変わるまで、偽りと欺きのことばを私の前に述べようと決めてかかっている。」(9)。

「ネブカデネザルは、幾つかの夢を見、そのために心が騒ぎ、眠れなかった。」(1)。2章には「王の王である王よ。天の神はあなたに国と権威と力と栄誉を授け」(37)とありますから、偉大な王であるネブカデネザルは、自分の果たすべき使命と働きを探っていたのです。自分の判断が間違っており、せっかくの夢の導きをないがしろにしてしまったら、国が滅び、民が虐殺にあったり、捕囚の憂き目を見ることになるのです。それなのに、せっかく知者を優遇し、占い者を引き立てたのに、こいう夢をあてることも説明することもできないならば、何の役にも立たないと怒ったのです。

アメリカのコロナワクチン接種率は9/20で54%で、日本よりも少なく、共和党支持者、福音派プロテスタント、農業従事者、30歳未満の若者ではワクチン接種反対者は半数近くおります。バイデン大統領は、連邦行政機関と委託業者の従業員に接種を義務付け、ワクチンを接種しないのでコロナウイルスに感染したという報道を続けているのにも関わらず、その状況です。この大統領の方針に26州の知事が反対し、違憲訴訟を起こそうとしている知事も10州おります。

日本では、医療従事者も、指導者も、宗教者も、ワクチンを打つべきだと信じています。信仰というものは、その対象・神学・理念・信仰指導者の品性などをよく吟味した上で入信するものです。私には、感染情報と上っ面の知識だけで判断するその人たちが危ういと思います。命が掛かっていることに関して、十分吟味しないで受け入れる人々は、どのように生きてきたのでしょうか。

ネブカデネザルは、呪術者や知恵者だというならば、どんな質問にも答えろ、と命令し、彼らは「この地上には、王の言われることを示すことのできる者はひとりもありません。」(10)と答えたので、殺されることになったのです。ところが、ダニエルは夢の内容と意味を語ります。「秘密を明らかにされる方が、これから起こることをお示しになったのです。」(29)。

現代が終末であることを悟らず、利権や権力を求める不信者の指導者を信じて行動を起こすならば、その行く末は悲惨なものとなります。

「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、大地震があり、方々に疫病やききんが起こり、恐ろしいことや天からのすさまじい前兆が現れます。」(ルカ21・10.11)とあります。気候変動で多雨や日照りなどで世界大の作物不作が続いており、コロナだけでない疫病が続くでしょう。民族紛争、国家間の争い、その他、これまでの漫然とした生き方では、生き長らえることは難しくなってくるでしょう。

アメリカでは、コロナワクチン接種に反対した牧師が感染して死んだという報道がされました。それにも関わらず、ワクチンを接種しようとしない人々が数千万人いることに驚きます。

ネブカデネザルの子、ベルシャツァル王は愚かな王でした。大宴会を催していると突然、「人間の手の指が現れ、王の宮殿の塗り壁」(5・5)に文字を書きました。恐れる王に対して、王母は、「あなたの王国には、聖なる神の霊の宿る人がいます。」(5・11)とダニエルを指名します。ダニエルは、「天の主に向かって高ぶり」と王を非難し、その文字「メネ、メネ、テケル、ウ・パルシン」を訳します。その意味は、王が軽い者なので治世を終わらせ、国は分割されて、メディアとペルシャに与えられる、ということです。「その夜、カルデア人の王ベルシャツァルは殺された。」(5・30)ネブカデネザル王の指導に従わず、「ベルシャツァル王よ、あなたはこれらのことをすべて知っていながら、心を低くしませんでした。」(5・22)と裁かれらのです。

「あなたがたの心が、放蕩や深酒やこの世の煩いのために沈み込んでいるところに、その日がわなのように、突然あなたがたに臨むことのないように、よく気をつけていなさい。」(ルカ21・34)。もはや、これまでのように油断して生きていることは許されない時代になっているのです。

ダニエル2章1~10節

  • 2:1 ネブカデネザルの治世の第二年に、ネブカデネザルは、幾つかの夢を見、そのために心が騒ぎ、眠れなかった。
  • 2:2 そこで王は、呪法師、呪文師、呪術者、カルデヤ人を呼び寄せて、王のためにその夢を解き明かすように命じた。彼らが来て王の前に立つと、
  • 2:3 王は彼らに言った。「私は夢を見たが、その夢を解きたくて私の心は騒いでいる。」
  • 2:4 カルデヤ人たちは王に告げて言った。──アラム語で──「王よ。永遠に生きられますように。どうぞその夢をしもべたちにお話しください。そうすれば、私たちはその解き明かしをいたしましょう。」
  • 2:5 王は答えてカルデヤ人たちに言った。「私の言うことにまちがいはない。もし、あなたがたがその夢とその解き明かしとを私に知らせることができなければ、あなたがたの手足を切り離させ、あなたがたの家を滅ぼしてごみの山とさせる。
  • 2:6 しかし、もし夢と解き明かしとを知らせたら、贈り物と報酬と大きな光栄とを私から受けよう。だから、夢と解き明かしとを私に知らせよ。」
  • 2:7 彼らは再び答えて言った。「王よ。しもべたちにその夢をお話しください。そうすれば、解き明かしてごらんにいれます。」
  • 2:8 王は答えて言った。「私には、はっきりわかっている。あなたがたは私の言うことにまちがいはないのを見てとって、時をかせごうとしているのだ。
  • 2:9 もしあなたがたがその夢を私に知らせないなら、あなたがたへの判決はただ一つ。あなたがたは時が移り変わるまで、偽りと欺きのことばを私の前に述べようと決めてかかっている。だから、どんな夢かを私に話せ。そうすれば、あなたがたがその解き明かしを私に示せるかどうか、私にわかるだろう。」
  • 2:10 カルデヤ人たちは王の前に答えて言った。「この地上には、王の言われることを示すことのできる者はひとりもありません。どんな偉大な権力のある王でも、このようなことを呪法師や呪文師、あるいはカルデヤ人に尋ねたことはかつてありません。