「御心に適う人々への福音。」 ルカ2章4~20節

世界で最初にイエス様の誕生をお祝いしたのは羊飼い達で、誕生後すぐに「飼い葉桶に寝ているみどりご」(12)を礼拝しに駆けつけます。羊飼い達に話を聞いた人はいなかったのでしょうか。

8日目に割礼を受け、33日の聖めの期間が満ちたのでエルサレムに献児式に出かけます。そこで義人シメオンに「主が遣わすキリスト」(26)と気付かれ「万民の前に備えられた救い」(31)と神を褒めたたえられます。しかし、シメオンはマリヤに言います。「この子は、イスラエルの多くの人が倒れ、また、立ち上がるために定められ、また、反対を受けるしるしとして定められています。剣があなたの心さえも刺し貫くでしょう。それは多くの人の心の思いが現れるためです。」(34.35)。

救い主は、人を救うだけではなく、救われないと判断した人たちから多くの攻撃を受け、マリヤのようなキリストと関わる人々の心をも刺し貫くような悲しいことが起こるのです。「正しい、敬虔な人」(25)だからこそ、シメオンは人の心の裏表、簡単に裏切り、サタンの手先になる人々がいることを知っており、そのような預言をするのです。神の実在とその福音を知れば、却って神を信じ敬虔な歩みをする人を嫌い、攻撃するのです。「それは多くの人の心の思いが現れるためです。」(34.35)。

「全ての人を照らすまことの光が」(ヨハネ1・9)が人の心の底まで照らし出します。善人を装う人も、自分の立派さを誇る人も、名士も、知識者も支配者も、「全ての人の」心が照らし出され、それが虚実なものであることが神に知られていることが示されるのです。

シメオンの後に、「宮を離れず断食と祈りをもって、昼も夜も神に仕えている」(ルカ2・37)女預言者アンナも、幼子が救い主であることに気が付きました。このような真理を見分ける霊性を身に着けることは、私利私欲に染まっていたり、自己主張の強い人では無理です。ただ、サタンに属する人、悪に加担する人は聖い人のことがわかり、本能的に敵対するようです。

これらの出来事の後に、東方から博士たちが来たのです。彼らは、「ヤコブから一つの星が進み出る。」(民数記24・17)と言われる星に導かれて来ます。この星は天文学者ケプラーによれば、木星と土星が合体して見える程に3回も接近と逆行を繰り返した紀元前7年のことであるとされます。また、紀元前2年に金星、木星が大接近したとする説もあります。他には、銀河系外の超新星の爆発であるとする説もあります。

ともかく、博士たちは「家に入り、母マリヤと共にいる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。」(マタイ2・11)。とあるので、既に家畜小屋ではなく、家に住んでいたことがわかります。ヘロデ大王は「ベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子をひとり残らず殺させた。その年齢は博士たちから突き止めておいた時間から割り出したのである。」(マタイ2・16)。ヘロデ大王の死は、紀元前3年頃なので、その数年前、イエス様の年齢が50日から1歳少しの頃に博士たちが来たことが類推できます。

このルカ福音書2章は、救い主は全ての人の心を照らし出すので、その誕生は、神に属する人とそれ以外の人との戦いをもたらすことを示すのです。世の中はクリスマスシーズンを喜び祝い、神の愛を感謝しています。そのようにしてクリスマスに教会に来る人は多くおります。しかし、聖書は、その救い主は、神を信じ従って敬虔になる人々には祝福をもたらしますが、そうではない人々には裁きと滅びをもたらすことを教えています。

人間は自己中心であり、神をも自分たちの都合の良い神であることを願っています。世界を神が造られ、人間をも造られたのですから、神中心であり、それを受け入れることは、神に従うということになります。そのことは罪びとにはやはり厳しく辛いことであり、人は神を信じ従って生きることができないのです。

敬虔な信仰者でさえも、思い通り願い通りに生きることはできません。そして、その願い自体が罪であり、滅びの源であることに気が付くのです。人が愛し合い、助け合い、仲良く睦まじく生きられたら幸いです。しかし、罪というものは、いつも自己中心の思いを抱かせ、人に要求します。そのようにして、自らが罪びとであることを認め、悔い改めて、神に従って生きることを選び、自分の願い、自分に都合の良いことを求めずに、神に委ねて生きるのです。

「平和が、御心にかなう人々にあるように。」(14)。神の御心にかなうように生きる以外には平安を確保することはできないのです。

ルカ2章4~20節

  • 2:4 ヨセフもガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。彼は、ダビデの家系であり血筋でもあったので、
  • 2:5 身重になっているいいなずけの妻マリヤもいっしょに登録するためであった。
  • 2:6 ところが、彼らがそこにいる間に、マリヤは月が満ちて、
  • 2:7 男子の初子を産んだ。それで、布にくるんで、飼葉おけに寝かせた。宿屋には彼らのいる場所がなかったからである。
  • 2:8 さて、この土地に、羊飼いたちが、野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた。
  • 2:9 すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が回りを照らしたので、彼らはひどく恐れた。
  • 2:10 御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためのすばらしい喜びを知らせに来たのです。
  • 2:11 きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。 2:12 あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これが、あなたがたのためのしるしです。」
  • 2:13 すると、たちまち、その御使いといっしょに、多くの天の軍勢が現れて、神を賛美して言った。
  • 2:14 「いと高き所に、栄光が、神にあるように。地の上に、平和が、御心にかなう人々にあるように。」
  • 2:15 御使いたちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼いたちは互いに話し合った。「さあ、ベツレヘムに行って、主が私たちに知らせてくださったこの出来事を見て来よう。」
  • 2:16 そして急いで行って、マリヤとヨセフと、飼葉おけに寝ておられるみどりごとを捜し当てた。
  • 2:17 それを見たとき、羊飼いたちは、この幼子について告げられたことを知らせた。
  • 2:18 それを聞いた人たちはみな、羊飼いの話したことに驚いた。
  • 2:19 しかしマリヤは、これらのことをすべて心に納めて、思いを巡らしていた。
  • 2:20 羊飼いたちは、見聞きしたことが、全部御使いの話のとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。