「あなたがたを召された方は真実ですから、きっとそのことをしてくださいます。」 Ⅰテサロニケ5章12-28節 大久保 仁牧師
「一人で成り立つ自分はない。…他者との関係において自分が成り立っている」は哲学者ヤスパースの言葉。教会はまさにいろいろな人がいて成り立っている共同体です。現代の教会では「主にある兄弟姉妹」と呼び合いますが、かつては「主にある兄弟」でした。今は男性だけでなく女性たちも含めた表現に改められました。
日本語の「彼ら」という言葉には本来女性たちも含まれていると理解されています。男性ですべての性を代表させる表現は他にあるでしょうか。「看護婦」「助産婦」「保母」は、「看護師」「助産師」「保育士」という言葉に改められました。これは女性たちに限定させないための改称です。教会はいろいろな職業の人や老若男女が集う、いわばユニークな集団であり、お互いの違いを認めながら愛によって結びついている共同体と言えます。
今から二千年前の教会は性別や民族、職業や身分の垣根を越えた、当時の風潮からすれば時代の先を行く共同体であり、人々はクリスチャンの群れに魅力を感じ、主のみもとに居場所を見いだしたのではないでしょうか。私たちは聖書が伝える最初のクリスチャンたちの信仰生活から生き方を学びたいと思うのです。
Ⅰ、悪をもって悪に報いず・・・12-13節は、クリスチャンの群れで強い立場にある人たちへの接し方を教えます。「指導し訓戒している人々」を重んじ尊重するべきです。一方で14節は、反対に弱い立場にある人たちへの接し方を教えます。弱さを覚えている人たちに対しては「寛容でありなさい」と。15節は、教会全体への勧めです。それはすべての人たちへの「接し方」、「勧め」でもあります。
「だれも悪に悪をもって報復してはならない。」これは平和の教えであり、テサロニケの町のすべての人たちへの接し方でもあります。いつも善を行うよう務め、善をもって悪に打ち勝ちなさい(ローマ12:21)と。聖書は教会の内と外とを使い分けることを勧めていません。むしろ、信仰の共同体である教会はこの世以上の倫理感を保って、教会の内外を含む「復讐をしない・対等な・一つの共同体」を作っていくのです。
Ⅱ、喜び・祈り・感謝し・・・「すべての人に対して、いつも善を行うよう務めなさい」(5:15)の直後に、16-18節の「いつも喜び・絶えず祈り・すべてのことに感謝しなさい」という有名な勧めが続きます。善を行うこととは、喜ぶこと、祈ること、感謝することです。これらは三つでありながら一つの善なのです。神は教会がこれを行い、各自が心の中に聖霊の火をともし続け、自らを「神から受けた聖霊の宮」(Iコリント6:19)となすことを望んでいます(5:19)。信仰生活は、喜ぶことであり、祈ることであり、感謝することに尽きるのです。神を喜び神に礼拝をささげ、隣人を喜び喜ばせること。神に祈ること、特に隣人のための執り成しをすること。身の回りで起こる出来事を神に感謝し、隣人の存在に感謝をすること。喜び祈り感謝するにつれて、自然に私たちは、すべてを吟味し良いものは何であるかを大事にし、悪いものから遠ざかるようになるのです(5:21-22)。これは聖霊の働きによるものです。
Ⅲ、真実な方・・・「平和の神」(5:23)は教会全体も、一人ひとりをも幸いにします。「霊、たましい、からだ」(5:23)とあるとおり聖書は人間を全体的なものとしてとらえていて、全体で一つであり、切り離すことはできません。
私たちは主イエス・キリストを贖い主としてたたえます。完全な贖いは主イエス・キリストの来られるときに実現します。それは人ひとりの救いの完成であり、「あの万物の改まる時(使徒3:21)」が実現されるのです。そのために平和の神は、イエスさまを恵みのプレゼントとしてこの世に送ってくださいました。神は「真実」なお方です。このお方が、私たちを招いています。だから、希望は決して絶望に終わりません。クリスチャン人生は、誠実な神と共に生きるやりがいのある旅です。旅は、救い、贖いの完成を目指す一歩一歩の歩みなのです。
私は共同体を形成していくための知恵は教会がモデルとなっているのではないかと思います。今の企業や職場、学校にも思いやりとか温もりとか絆ということを大切にする考え方が出てきました。これは広く社会全体にもとても大事なことだと思います。教会には実に様々な人たちが集っています。他のいろいろな集まりと教会との違いはなんでしょうか。教会という集まりが大切にしたいことは何でしょうか。教会に神の平和がつくられていくために、聖書は喜ぶこと・祈ること・感謝することを勧めています。皆さんは、何を喜んでいるでしょうか。何を祈っているでしょうか。そして、何を感謝していますか。聖書はイエスさまのことを思いながら、喜び、祈り、感謝することを勧めているのではないでしょうか。イエスさまのことを思うとき、私たちの喜び、祈り、感謝は、どのようなものになっていくでしょうか。
Ⅰテサロニケ5章12-28節
- 5:12 兄弟たちよ。あなたがたにお願いします。あなたがたの間で労苦し、主にあってあなたがたを指導し、訓戒している人々を認めなさい。
- 5:13 その務めのゆえに、愛をもって深い尊敬を払いなさい。お互いの間に平和を保ちなさい。
- 5:14 兄弟たち。あなたがたに勧告します。気ままな者を戒め、小心な者を励まし、弱い者を助け、すべての人に対して寛容でありなさい。
- 5:15 だれも悪をもって悪に報いないように気をつけ、お互いの間で、またすべての人に対して、いつも善を行うよう務めなさい。
- 5:16 いつも喜んでいなさい。
- 5:17 絶えず祈りなさい。
- 5:18 すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることです。
- 5:19 御霊を消してはなりません。
- 5:20 預言をないがしろにしてはいけません。
- 5:21 しかし、すべてのことを見分けて、ほんとうに良いものを堅く守りなさい。
- 5:22 悪はどんな悪でも避けなさい。
- 5:23 平和の神ご自身が、あなたがたを全く聖なるものとしてくださいますように。主イエス・キリストの来臨のとき、責められるところのないように、あなたがたの霊、たましい、からだが完全に守られますように。
- 5:24 あなたがたを召された方は真実ですから、きっとそのことをしてくださいます。
- 5:25 兄弟たち。私たちのためにも祈ってください。
- 5:26 すべての兄弟たちに、聖なる口づけをもってあいさつをなさい。
- 5:27 この手紙がすべての兄弟たちに読まれるように、主によって命じます。
- 5:28 私たちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたとともにありますように。
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