「無宗教者の無謀」Ⅱテサロニケ2章4節

直 訳

「神と呼ばれる凡ゆる物または礼拝の対象に対して逆らう者かつ高ぶる者は、神の神殿の中へと、神の如くに座し、彼自身、神であると宣告する。」

本日の御言葉……、世界の終末の時、基督が再臨される前に、現れる事象の一つです。こなれた訳にすれば、「どんな神であれ、神と呼ばれたり、礼拝されている全て物に敵対し、高慢に振る舞う者どもは、畏れ多くも神の社に土足で踏み入り、神の座に立って、『我こそが神なり』と宣告する。」となります。今日の日本社会の現状、世界の現実をそのまま表現しているようです。

   一 神否定の無宗教者

第一に、「どんな神であれ、神と呼ばれたり、礼拝されている全て物に敵対し、高慢に振る舞う者ども」が現れるのです。どんな宗教の神であれ、どんな種類の神であれ、神と呼ばれる一切のものに敵対します。「神」とは呼ばれていなくても、礼拝の対象とされるものに対しても逆らい、高ぶります。徹底した無神論であり、徹底した無宗教です。二千年前の世界では、パウロがこんなことを言っても、誰も信用してくれなかったでしょう。

日本が無宗教国家になったのは、敗戦後、占領軍総司令部・GHQが、日本の宗教を否定し、強引な基督教化を進めたことに端を発します。当時、GHQ総司令官は、「日本は、遅からずして基督教国になる」と歓喜していますが、現実には1%にも達していません。神道や仏教、神社や寺院を否定することは、神や宗教の否定に繋がります。結果的に、正義の神を否定する無宗教化となってしまいました。

二 神の世界にて君臨

 第二に、彼らは、神の神殿において、神の如くに、神の座に着くと言うのです。戦前の日本では、教会の礼拝の前に皇居遥拝が求められていました。現在の中国では、国家や共産党に対する忠誠が求められています。仏教でも、道教でも、基督教でも、まずは国旗を掲揚してから、礼拝を始めることが可能となっているようです。

 神の神殿に、神でないものが侵入し、神の如くに、神の座に着く……、その典型のようです。

 神の神殿とは、必ずしも、何らかの宗教の神殿と呼ばれているものに限りません。この世界は神の創造した神の世界ですから、この世界は神の御座であり、神の神殿です。

 そこに、神を否定し、拝礼を禁止する者が、我が物顔に君臨しています。それが現代社会です。

  三 自己神論たる宣告

 第三に、彼らは、あれほど神を嫌い、神を否定していたのに、何と、自らが「神」であると宣言するに至るのです。

 文字通りに「神」と言うこともあれば、「皇帝」「王」「絶対者」「統治者」「大統領」などを名乗ることもあります。単に自分勝手にそれを名乗るだけではなく、法律や規制、社会制度や経済手段を用いて、強制し、制度化し、組織化します。あらゆる情報を手中に収め、その情報操作で知らず知らずに強制されるということもありです。

 「無神論」とは、英語では「atheism」。希語の「a-theos」に由来します。「theos」は「神」で、「a-」は「否定」「否」という意味です。つまり、「無神論」とは、神を否定する「否神論」ということです。

 そして、否定して空席となった神の座に自分が座るのです。つまり自らを神の座に据える「自己神論」なのです。

 今、最も危惧されるのはAIです。小説『AI崩壊』が好評で、映画化され、間も無く封切られます。AI「のぞみ」が収集した国民の膨大な個人データを基に、人類を選別し、殺戮を始めるというストーリーです。半世紀も前の手塚治虫の漫画で既に、「電子頭脳マザーによる人類統治」が描かれていました。

 誤りを犯さない機械による統治は、闘争心盛ん、嘘が平気、他人を犠牲にした自己実現、淫らな支配欲などを有する人間とは異なって、「理想的な統治」を夢見させるものですが、機械の計算で行き着くところは、結局は、人類の破局であり、破滅なのです。

 終末における現象でしょう。信仰者として、いかに終末を生きるか、真剣に考えるべき時が来ています。

Ⅱテサロニケ2章4節

  • 2:3 だれにも、どのようにも、だまされないようにしなさい。なぜなら、まず背教が起こり、不法の人、すなわち滅びの子が現れなければ、主の日は来ないからです。
  • 2:4 彼は、すべて神と呼ばれるもの、また礼拝されるものに反抗し、その上に自分を高く上げ、神の宮の中に座を設け、自分こそ神であると宣言します。
  • 2:5 私がまだあなたがたのところにいたとき、これらのことをよく話しておいたのを思い出しませんか。
  • 2:6 あなたがたが知っているとおり、彼がその定められた時に現れるようにと、いま引き止めているものがあるのです。
  • 2:7 不法の秘密はすでに働いています。しかし今は引き止める者があって、自分が取り除かれる時まで引き止めているのです。
  • 2:8 その時になると、不法の人が現れますが、主は御口の息をもって彼を殺し、来臨の輝きをもって滅ぼしてしまわれます。
  • 2:9 不法の人の到来は、サタンの働きによるのであって、あらゆる偽りの力、しるし、不思議がそれに伴い、
  • 2:10 また、滅びる人たちに対するあらゆる悪の欺きが行われます。なぜなら、彼らは救われるために真理への愛を受け入れなかったからです。
  • 2:11 それゆえ神は、彼らが偽りを信じるように、惑わす力を送り込まれます。
  • 2:12 それは、真理を信じないで、悪を喜んでいたすべての者が、さばかれるためです。