「神の御手の不思議。」 使徒9章1~16節
大使徒パウロの生涯は奇想天外なものであり、神の御手による空前絶後の歩みをしました。パウロは、どのように育ったのでしょうか。
「私は生まれながらの市民です。」(使徒22・28)。ローマ市民権はローマ市民集会における選挙権・被選挙権(ローマの官職に就任する権利)、婚姻権、所有権、裁判権とその控訴権(ローマ法の保護下に入る)、ローマ軍団兵となる権利などがあり、人頭税や属州民税(資産の10%で凡そ収穫の33%程度)も課されないという特権があります。「そこで、パウロを取り調べようとしていた者たちは、すぐにパウロから身を引いた。千人隊長も、パウロがローマ市民であり、その彼を縛っていたことを知って恐れた。」(29)。ローマ市民は法律によって保護されていたのです。
パウロは、「私は、キリキアのタルソで生まれたユダヤ人ですが、この町で育てられ、ガマリエルのもとで先祖の律法について厳しく教育を受け、今日の皆さんと同じように、神に対して熱心な者でした。」(22・3)と「ヘブル語で語りかけ」(2)ました。ユダヤ人であっても、外国からきた人々は、ヘブル語を話せなかったので、パウロが生粋のユダヤ人であることは言葉でわかりました。ローマ帝国で話されるのは、ラテン語であり、教養ある人々はギリシャ語も話しました。旧約聖書はヘブライ語、新約聖書は国際共通語であるギリシャ語で書かれましたが、4世紀にヒエロニムスが公用語であるラテン語(ブルガタ訳)に翻訳したのです。
パウロは、この町(エルサレム)で育てられ、高名なパリサイ派の教師「ガマリエルのもとで先祖の律法について厳しく教育を受け」ました。これは、パウロがきちんとした教育を受けた社会的地位のある人物であることを証明します。
パウロは、「大祭司」にクリスチャンを捕らえ、エルサレムに引いてくる権利をもらいます。社会的地位も高かったのです。
このようなパウロが、クリスチャンを脅かして殺害しようとしたのは、律法に忠実であり、熱心であったからです。個人的な怒りとか敵意というものではありません。申命記8・19に、「もしもあなたが、あなたの神、主を忘れ、他の神々に従って行き、それらに仕え、それらを拝むようなことがあれば、今日、私はあなたがたにこう警告する。あなたがたは必ず滅びる。」とあるように、ユダヤ教以外を認めなかったからです。旧約聖書に記される神の掟は、絶対服従であり、それに従わなければ殺されるというものでした。
イエス様が福音を語った時、人々は、「その口から出てくる恵みのことばに驚いて」(ルカ4・22)とあります。つまり、絶対服従の律法から「貧しい人に良い知らせを伝える」(18)福音に変わったのです。
この奥義を正確かつしっかりと伝えるためには、パウロのような教養を積んだ、聖書を正確に解き明かし教える能力の人物が必要でした。それは、熱心と忠実、そして信仰深い12弟子では無理だったのです。
イエス様ご自身が、パウロに語り掛けることが必要でした。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。」(5)。強烈な光に照らされて、パウロは「目を開けていたものの、何も見えなかった。」(8)。
3日後、主の弟子のアナニアに幻の中で主が語り掛けました。迫害する者の指導者であるサウロのところに行って、その頭に手を置き祈るように伝えます。アナニアは、「主よ。私は多くの人たちから、この人がエルサレムで、あなたの聖徒たちにどんなにひどいことをしたかを聞きました。彼はここでも、あなたの名を呼ぶ者たちをみな捕縛する権限を、祭司長たちから与えられています。」(13.14)。
主は答えます。「行きなさい。あの人はわたしの名を、異邦人、王たち、イスラエルの子らの前に運ぶ、わたしの選びの器です。彼がわたしの名のためにどんなに苦しまなければならないかを、わたしは彼に示します。」15.16)。アナニアは従い、「兄弟サウロ」(17)と祈ります。サウロの目からうろこのようなものが落ち、目が見えるようになり、洗礼を受けます。その後のパウロの活躍は皆さんご存じです。
私たちは、このことから幾つかのことを学びます。
① 凄まじく攻撃し迫害する人でも、神の手により救われる。
② 敵のために祈り、伝道する。
③ 神が働くならば、形勢は逆転する。
④ 神に用いられるためには、しっかりと勉強し、教えることが大事。
⑤ 選びの器は、多くの試練を受ける。
⑥ 神は、人の人生と生き方をまったく変えることがある。
⑦ とことん努力する人が神に用いられる。
ペテロが、「歳をとると、あなたは両手を伸ばし、他の人があなたに帯をして、望まないところに連れていきます。」(ヨハネ21・18)と主に言われた時、ヨハネはどうなのですか、と聞きます。主は、「あなたに何の関りがありますか。あなたは、わたしに従いなさい。」822)と怒られます。神の導きは人それぞれです。どのようであっても、神に従う人は幸いです。
使徒9章1~16節
- 9:1 さて、サウロはなおも主の弟子たちを脅かして殺害しようと息巻き、大祭司のところに行って、
- 9:2 ダマスコの諸会堂宛ての手紙を求めた。それは、この道の者であれば男でも女でも見つけ出し、縛り上げてエルサレムに引いて来るためであった。
- 9:3 ところが、サウロが道を進んでダマスコの近くまで来たとき、突然、天からの光が彼の周りを照らした。
- 9:4 彼は地に倒れて、自分に語りかける声を聞いた。「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか。」
- 9:5 彼が「主よ、あなたはどなたですか」と言うと、答えがあった。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
- 9:6 立ち上がって、町に入りなさい。そうすれば、あなたがしなければならないことが告げられる。」
- 9:7 同行していた人たちは、声は聞こえてもだれも見えないので、ものも言えずに立っていた。
- 9:8 サウロは地面から立ち上がった。しかし、 目を開けていたものの、何も見えなかった。それで人々は彼の手を引いて、ダマスコに連れて行った。
- 9:13 しかし、アナニアは答えた。「主よ。私は多くの人たちから、この人がエルサレムで、あなたの聖徒たちにどんなにひどいことをしたかを聞きました。
- 9:14 彼はここでも、あなたの名を呼ぶ者たちをみな捕縛する権限を、祭司長たちから与えられています。」
- 9:15 しかし、主はアナニアに言われた。「行きなさい。あの人はわたしの名を、異邦人、王たち、イスラエルの子らの前に運ぶ、わたしの選びの器です。
- 9:16 彼がわたしの名のためにどんなに苦しまなければならないかを、わたしは彼に示します。」
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