「子育ての後先。」 士師記13章2~8節
サムソン士師記の「士」の一人で、「サムソンは二〇年間イスラエルをさばいた。」(士師16・31)とありますが、クリスチャンにとってろくでもない勇士という印象を与えます。先週のイサクとリベカの夫婦の状態を見ても、新約の教えからは離れており、旧約の「生めよ、増えよ。」(創世記1・28)の基準に沿って、イスラエル民族の定着と拡大、そして創造主である神の顕現に重きが置かれています。
突然、ダン部族のマノアの不妊の妻に天使が語り掛けます。妊娠して男の子を産むので、ぶどう酒や酒を飲まず、汚れた物を食べず、その子に剃刀を当ててはならない。「その子は胎内にいるときから、神に献げられたナジル人だから。彼はイスラエルをペリシテ人の手から救い始める。」(5)と宣言されるのです。マノアは自分にも天使が現れるように求めますが、「マノアはその方が主の使いであることを知らなかった」(16)という状況です。そして生まれたのがサムソンです。「その子は大きくなり、主は彼を祝福された。」(24)
サムソンは、支配する異邦人のペリシテ人の娘を見染め、妻にします。めちゃくちゃですがが、「主は、ペリシテ人と事を起こす機会を求めておられたのである。」(14・4)。結婚の宴で、サムソンの謎を妻にせがまれて明かしたので、その謎が解かれます。怒ったサムソンは、隣町の住民を殺して、その服を宴の客に渡し、帰ります。それで、妻は他の人の妻になります。ところが、後日サムソンが帰り、妻と会いたいというと、他の人の妻になっていたので、父が妹を妻に与えようとします。
怒ったサムソンは、ジャッカルを300匹捕らえて、2匹毎の尾にたいまつを付けてペリシテ人の麦畑に放ち、オリーブ畑に至るまで燃やし尽くしました。怒ったペリシテ人は、サムソンの妻と父を火で焼いて殺します。サムソンは、仕返しをします(15・8)。
ユダの人々が支配者ペリシテ人を恐れてサムソンを縛り差し出すと、「サムソンは真新しいろばの顎骨を見つけ、手を伸ばして取り、それで千人を打ち殺した。」(15・15)。乱暴者のサムソンに手を焼いたペリシテ人の領主たちは、サムソンが女好きなことに目を付け、美女デリラに「サムソンを口説いて、彼の強い力がどこにあるのか、またどうしたら私たちが彼に勝ち、縛り上げて苦しめることができるかを調べなさい。」(16・5)とデリラに巨額な報酬を約束します。
美女デリラに口説かれ責められ、サムソンは自分がナジル人で、「髪の毛が剃り落されたら、私の力は私から去り、私は弱くなって普通の人のようになるだろう。」(16・17)と告げました。色香に負けたサムソンは、目をえぐられ、青銅の足かせを掛けられ、牢の中で臼を引かせられました。偶像に献げられる盛大な宴の見世物として、神殿で物笑いの種になります。
サムソンは主を呼び求めて、「神、主よ、どうか私を心に留めてください。ああ神よ、どうか、もう一度だけ私を強めてください。」(16・28)と願い、神殿を支えている二本の中柱を倒して神殿を倒し、約三千人を殺しました。「彼の身内の者や父の家の者たちがみな下って来て、彼を引き取り、父マノアの墓に運び上げて葬った。」(31)。
両親は、サムソンの心情も、事の経緯も、信仰深くもなく、ただ、命じられたままにナジル人としてサムソンと接し、従ったように思います。神の選びというのは、両親の育て方とか、環境とか、本人の資質などとは全く別に、その働きをするために、名指しで選ばれるということがあるのですね。「子育ての後先」としては、平凡な親だったからこそ、ナジル人と神に名指しされたサムエルを尊敬し、大事にし、変に躾けなかったと言えるでしょう。
サムソンの性格を挙げてみましょう。①感情的、②攻撃的、③女好きで女に弱い、④超自然な体力、⑤ジャッカルの尾にたいまつを付けるような特異な発想、⑥従順ではなく個人的、⑦騙されやすい、⑧甘やかされ自分勝手な正確、⑨神を信じ悔い改める、というところでしょうか。神が、マノアとその妻を親として選んだのは、政治的・時代的状況と身体の遺伝的優越性でしょう。現代で言えば、トランプさんのような人でしょうか。
時代的には、新約聖書の教えが定着するのが難しい戦乱、暴力的な時代です。士師記の後のルツ記では、敬虔で信仰深いボアズがおり、ダビデの曽祖父になります。
清貧や質実を旨とする日本的キリスト教では、サムソンは批判的に読み取る人が多いと思われます。しかし、サムソンの時代では、神はサムソンを用いたのです。現代日本において、クリスチャンが社会的にも政治的にも影響力がなく、却って稚拙なのは、聖書の教えを道徳的に捉えすぎていることもあると思っています。神が用いるのは、歴史的には、強い個性のある行動力のある人です。そのような子どもを育てる親は少ないように思われます。
士師記13章2~8節
- 13:2 さて、ダンの氏族に属するツォルア出身の一人の人がいて、名をマノアといった。彼の妻は不妊で、子を産んだことがなかった。
- 13:3 【主】の使いがその女に現れて、彼女に言った。「見よ。あなたは不妊で、子を産んだことがない。しかし、あなたは身ごもって男の子を産む。
- 13:4 今後あなたは気をつけよ。ぶどう酒や強い酒を飲んではならない。汚れた物をいっさい食べてはならない。
- 13:5 見よ。あなたは身ごもって男の子を産む。その子の頭にかみそりを当ててはならない。その子は胎内にいるときから、神に献げられたナジル人だから。彼はイスラエルをペリシテ人の手から救い始める。」
- 13:6 その女は夫のところに行き、次のように言った。「神の人が私のところに来られました。その姿は神の使いのようで、たいへん恐ろしいものでした。私はその方がどちらから来られたか伺いませんでした。その方も私に名をお告げになりませんでした。
- 13:7 けれども、その方は私に言われました。『見よ。あなたは身ごもって男の子を産む。今後、ぶどう酒や強い酒を飲んではならない。汚れた物をいっさい食べてはならない。その子は胎内にいるときから死ぬ日まで、神に献げられたナジル人だから』と。」
- 13:8 そこで、マノアは【主】に願って言った。「ああ、主よ。どうか、あなたが遣わされたあの神の人を再び私たちのところに来させ、生まれてくる子に何をすればよいか教えてください。」
投稿者プロフィール
最新の投稿
- 今週のメッセージ2024年11月3日「事業の後先。」 伝道者の書2章4~12節 今週のメッセージ
- クリエーション子供礼拝2024年11月3日「あり方を捨てる」2024年11月3日 クリエーション子供礼拝
- お知らせ2024年11月3日2024年11日04日 聖日礼拝
- イベント2024年10月28日讃美礼拝10月27日開催されました。 HOPE.Vol 18