「老いの後先。」 ヨブ42章7~17節
先週は「死の後先」を語りました。ドルカスさんの死の後の人々の嘆きとよみがえりへの期待は、未信者を含めたもので、非常に感銘を受けます。当然ながら、自分の為に生きて、他の人の為に尽くしていない人が死んだところで、人々に惜しまれることはありません。
「若者をその行く道にふさわしく教育せよ。そうすれば、年老いても、それから離れない。」(箴言20・29)、「怠惰に暮らすことはなく、人からただでもらったパンを食べることをしません。むしろ、・・・夜昼労し苦しみながら働きました。」(Ⅱテサロニケ3・7.8)とあるように、働く習慣を身に付けることです。歳を取ったから働かない、という人は、その労働が強いられてしていて身に付いていないからです。働く習慣が身に付いた人は、老いても病んでもそれなりに働きます。
最近、「無理をしてはいけない。」という言葉が良く用いられますが、無理をしなければ身体は強くならず、経験も積まず、成果もあげられません。助けを求めるくせも自分を弱くします。だからと言って、成果を求める傾向は、自分を痛めてしまいます。
成果主義は社会、会社、学校、家庭、人格を損なってしまいます。短期的な成果を求めることは、毎日の生活や人間関係にゆとりをなくし、競争に追い込みます。
老いて神の祝福を受けたとされている人は以下の通りです。
「アブラハムは年を重ねて、老人になっていた。主は、あらゆる面でアブラハムを祝福しておられた。」(創 24:1)
「イサクは年老いて満ち足り、息絶えて死に、自分の民に加えられた。息子のエサウとヤコブが彼を葬った。」(創 35:29)
「ヨブは死んだ。年老いて満ち足りた生涯であった。」(ヨブ 42:17)
これらの人の特徴は以下の通りでしょう。
① 信仰によって神に導かれた歩みをした。自らが選んだものではない。
② 試練や攻撃にひるまず、神を信じて立ち向かっていった。
③ 長い時間の忍耐を続けても真っ直ぐに歩んだ。
④ 妻を大事にした。共に生き、話し合いをした。
⑤ 信仰の理解者はいなかった。神だけを信頼していた。
⑥ 異国で寄留者、不安定な立場で力を築き上げた。
⑦ 騙され裏切られても、誠実に生き、働き続けた。
ヨブについてはひどい状況でした。妻は、あまりの苦難に「神を呪って死になさい。」(ヨブ2・9)と言うほどです。ところが、ヨブは妻に、「あなたは、どこかの愚かな女が言うようなことを言っている。私たちは幸いを神から受けるのだから、災いも受けるべきではないか。」(10)。と言い、妻を諭しています。この言葉から、ヨブの妻はヨブと信仰を共有する良い妻であることがわかります。ある訳では、ヨブは信仰一途なので、「神を讃え抜いて死になさい。」と妻が呆れたとも訳されています。妻は、大変な困難の中、ヨブの食事を作り、身体や剥がれた皮膚のケアをし、悪臭や人々の批判の中でも、ヨブに寄り添い続けたのです。うまく行く時は夫を褒め、ダメな時は見放すようではないのです。だからこそ、この最後の時に、ヨブと共に祝福を受けたのです。
友人たちはどうでしょうか。ヨブの不幸を聞いて、わざわざ遠くから「ヨブに同情し、慰めようと、互いに打ち合わせて来た。」(2・11)のです。「彼らは彼と共に七日七夜、地に座っていたが、だれも一言も彼に話しかけなかった。彼の痛みが非常に大きいのを見たからである。」(13)。男性は、不幸や失敗の原因を考える傾向があります。「誰か潔白なのに滅びた者があるか。」(4・7)。「人は神の前に正しくあり得ようか。」(4・17)とヨブを責め始めます。「私たちが調べ上げたことはこの通りだ。」(5・27)。信仰深い友人たちも因果応報論です。
今日の説教題は「老いの後先」です。老いた後、病気になっていたり、貧しかったり、不幸が続いていたりすると、それまでの行いや性格、努力が足りなかったからと、自他ともに自覚することもあるでしょう。泣き面に蜂のようで、老いてから今更、悔い改めようもない、というところでしょう。因果応報論です。
私自身は、すべてうまく行かないこと、病気になったり、怪我をしたり、倒産したり、家族に問題が起こったりすることを覚悟しています。多くの信仰者や牧師たちが成功することを願っています。成果主義ですね。しかし、その思いが日々の生活を縛ると、苛立ちと悩みが人の心を覆い、神への信頼を失います。
私にとってガーデニングや気のいいおっちょこちょいの妻との日々は、清々しいものです。失礼ながら、信者への期待もほどほどにすると気が楽です。うまく行かなければ、それも神の御心です。
ヨブの友人たちは、神の御心を自分の判断の下に置きました。多くの信仰者がそのように過ごしているように思います。ヨブの妻は、悲惨なヨブと共に生きたので、祝福を得たのです。
ヨブ42章7~17節
- 42:7 【主】がこれらのことばをヨブに語った後、【主】はテマン人エリファズに言われた。「わたしの怒りはあなたとあなたの二人の友に向かって燃える。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように、わたしについて確かなことを語らなかったからだ。
- 42:8 今、あなたがたは雄牛七頭と雄羊七匹を取って、わたしのしもべヨブのところに行き、自分たちのために全焼のささげ物を献げよ。わたしのしもべヨブがあなたがたのために祈る。わたしは彼の願いを受け入れるので、あなたがたの愚行に報いるようなことはしない。あなたがたは、わたしのしもべヨブのように、わたしについて確かなことを語らなかったが。」
- 42:9 テマン人エリファズと、シュアハ人ビルダデと、ナアマ人ツォファルは行って、【主】が彼らに命じられたようにした。すると【主】はヨブの願いを受け入れられた。
- 42:10 ヨブがその友人たちのために祈ったとき、【主】はヨブを元どおりにされた。さらに【主】はヨブの財産をすべて、二倍にされた。
- 42:11 こうして彼のすべての兄弟、すべての姉妹、それに以前のすべての知人は、彼のところに来て、彼の家で一緒に食事をした。そして彼に同情し、【主】が彼の上にもたらされたすべてのわざわいについて、彼を慰めた。彼らはそれぞれ一ケシタと金の輪一つずつを彼に与えた。
- 42:12 【主】はヨブの後の半生を前の半生に増して祝福された。それで彼は羊一万四千匹、らくだ六千頭、牛一千くびき、雌ろば一千頭を持つことになった。
- 42:17 こうしてヨブは死んだ。年老いて満ち足りた生涯であった。
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