「荒んだ心の結末。」 創世記37章18~27節

先週お話ししたように、生き抜くために一生懸命であった父、父の愛を勝ち取ろうと争った姉妹の母のもとに生まれた息子たち12人は、付けられた名前からして親の欲望の現われでした。

49章には、父ヤコブが息子たちに語った預言があります。

「ルベンよ、おまえはわが長子。わが力、わが活力の初穂。威厳と力強さでまさる者。だが、おまえは水のように奔放で、おまえはほかの者にまさることはない。」(49・3.4)。

「シメオンとレビとは兄弟、彼らの剣は暴虐の武器。彼らの密議に加わるな。彼らは怒りに任せて人を殺し、思いのままに牛の足の筋を切った。のろわれよ、彼らの激しい怒り、彼らの凄まじい憤りは。私はヤコブの中で彼らを引き裂き、イスラエルの中に散らそう。」5-7)。

「ユダよ、兄弟たちはおまえをたたえる。おまえの手は敵の首の上にあり、おまえの父の子らはおまえを伏し拝む。ユダは獅子の子。王権はユダを離れず、王笏はその足の間を離れない。ついには彼がシロに来て、諸国の民は彼に従う。」(8.9)。

「ゼブルンは海辺に、船の着く岸辺に住む。」(13)。「イッサカルは、たくましいろば、苦役を強いられる奴隷となる。」(14.15)。ダン、ガド、ナフタリ、ベニヤミンについては、その凶暴性を預言されます。ヨセフは、「おまえの父の祝福は、私の親たちの祝福にまさり、永遠の丘の極みにまで及ぶ。これらがヨセフの頭の上に、兄弟たちの中から選り抜かれた者の頭の頂にあるように。」(26)と正妻の子として祝福されています。

このような息子たちの性格と将来は、37章に見られるヨセフに対する行動でも現わされています。「ヨセフは、十七歳のとき、兄たちと共に羊の群れを飼っていた。ヨセフは彼らの悪い噂を彼らの父に告げた。イスラエルは誰よりもヨセフを愛していた。」(37・2.3)。

自分の子を差別し、偏愛すると家族は分裂し、破綻してきます。この場合、それぞれの母親の立場や状態も異なり、父の扱いも変わっていたので、問題は深刻です。息子たちが父の愛情に飢えていたこと、だからこそ荒々しい性格になってしまったことは事実です。親は、それをわきまえ、育てていかなければなりません。ヤコブはそれができなかったので、家族に悲劇が起こってしまいました。「ヨセフの兄たちは、父が兄弟たちの誰よりも彼をしているのを見て、彼を憎み、穏やかに話すことができなかった。」(4)。

さて、このような状況の中で日本人の考えることは、円満に過ごすように説得するとか、親が悪いとかということでしょう。しかし、もし、兄たちの怒りの故にヨセフをエジプトに売り飛ばすことがなかったら、ヨセフがエジプトの首相になることもないし、ヤコブを含む一族が大飢饉から逃れることはできなかったのです。神の御手の中にあったのです。

人の罪深さも、性格の悪さも神の手の中にあり、罰せられるべきものは罰せられ、救われる人は救われるということが神に委ねた者の考え方であり、人の心はその人自身のものなのです。このような残虐な行為をしなくても、その心の内は、悔い改めない限り、裁きを同じように受けるものなのです。ちなみに、暴虐の歩みをすると言われたレビは、自らを悔い改め献身した部族となり、神の祝福を勝ち得ています。そして、ユダとレビの子孫は、ダビデ王が出た後も、忠実に王に従い現在に続いています。

日本人は、悔い改めることをしないで、その場を無難に治めようとします。政治でも、経済でも、会社でも、家族でも同様で、問題の先送りにしかすぎません。そして、自分の罪もいつか、流れ去り忘れ去ると思っているのです。聖書を知っている者は、人の罪深さは執拗で、真に悔い改めない限り、必ず問題は繰り返すことを知っています。日本人の罪性は、ヨセフの兄らと同様です。

兄たちは、ヨセフが見た夢に腹を立てました。「父はこのことを心にとどめていた。」(11)。人の心に怒りや憎しみが起こった時、それを制御できない人は、自らを滅びに導きます。怒るとアドレナリンが出て、理性を制御できなくなります。怒ること、興奮することを決してしてはいけないのです。兄たちは、ヨセフを殺そうとしました。それをとどめたのは、長男ルベンと4男ユダだけでした。

長男ルベンは、「父の側女ビルハと寝た。」(35・22)ので、長男の権利を失い、次男シメオンと3男レビは、妹ディナが汚されたので、悔い改めているにも関わらずハモルと息子シェケムそして、町の男たちを殺したのでした。ヤコブは、息子たちの乱暴に苦しみ、べテルで「あなたがたの中にある異国の神々を取り除き、身をきよめ、衣を着替えなさい。」(35・3)と諭したけれど、息子たちの荒れた心は収まらず、ヨセフを隊商に売るということになるのでした。

創世記37章18~27節

  • 37:18 兄たちは遠くにヨセフを見て、彼が近くに来る前に、彼を殺そうと企んだ。
  • 37:19 彼らは互いに話し合った。「見ろ。あの夢見る者がやって来た。
  • 37:20 さあ、今こそあいつを殺し、どこかの穴の一つにでも投げ込んでしまおう。そうして、狂暴な獣が食い殺したと言おう。あいつの夢がどうなるかを見ようではないか。」
  • 37:21 しかし、ルベンはこれを聞き、彼らの手から彼を救い出そうとして、「あの子を打ち殺すのはやめよう」と言った。
  • 37:22 また、ルベンは言った。「弟の血を流してはいけない。弟を荒野の、この穴に投げ込みなさい。手を下してはいけない。」これは、ヨセフを彼らの手から救い出し、父のもとに帰すためであった。
  • 37:23 ヨセフが兄たちのところに来たとき、彼らは、ヨセフの長服、彼が着ていたあや織りの長服をはぎ取り、
  • 37:24 彼を捕らえて、穴の中に投げ込んだ。その穴は空で、中には水がなかった。
  • 37:25 それから、彼らは座って食事をした。彼らが目を上げて見ると、そこに、イシュマエル人の隊商がギルアデからやって来ていた。彼らは、らくだに樹膠と乳香と没薬を背負わせて、エジプトへ下って行くところであった。
  • 37:26 すると、ユダが兄弟たちに言った。「弟を殺し、その血を隠しても、何の得になるだろう。
  • 37:27 さあ、ヨセフをイシュマエル人に売ろう。われわれが手をかけてはいけない。あいつは、われわれの弟、われわれの肉親なのだから。」兄弟たちは彼の言うことを聞き入れた。