「父は己に厳しくあれ。」Ⅱサムエル15章30~37節
Ⅰ歴代誌3章によれば、ダビデの子は、アヒノアムの子アムノン、アビガイルの子ダニエル、ゲシェルの王の娘マアカの子アブシャロム、違う妻の子たち、アドニヤ、シェファテヤ、イテレアムの6人がヘブロンで生まれ、エルサレムでバテ・シェバによりシャムア、ショバブ、ナタン、ソロモンの4人が生まれました。その他に9人、更に側女の子がいました。王として戦いに明け暮れていたダビデは、愛情深かったけれども、この多くの男の子を育てることには十分な時間もなく、また不慣れだったと思われます。
仕事熱心でスケベな男性達の特徴を備えていますが、仕事ばかりをしている人はレジリエンス(回復力)が低いそうです。ダビデは、息子の反抗に対しては泣いてばかりいて「その頭をおおい、裸足で登った。」(30)というようにだらしがありません。仕事一途な男性というのは脆いのです。ところが、殆どの男性の価値観は、「仕事ができる。」というものです。男性の価値観は、単一或は単純なもののような気がします。
長男のアムノンは異母妹に罪を犯して、その兄アブシャロムの怒りを買い殺されます。アブシャロムは王の娘である母親の影響で自尊心も体格も知恵も秀でた優秀な息子ですが、道徳的・人格的ではなく、浅知恵によって身を滅ぼしていきます。
ともかく、息子アブシャロムとは戦いたくないダビデは、「さあ、逃げよう。」(15・14)と王宮を去ります。祭司ツァドクがレビ人と共に神の箱を担いで来ると、「神の箱を町に戻しなさい。もし、私が【主】の恵みをいただくことができれば、主は、私を連れ戻し、神の箱とその住まいとを見せてくださろう。もし主が、『あなたはわたしの心にかなわない』と言われるなら、どうか、この私に主が良いと思われることをしてくださるように。」(15.25.26)と災いも罰も神に委ねる覚悟をします。私は、ダビデのこのようなところが大好きなのですが、女性と息子には愚かな人です。
祭司ツァドクと二人の息子をアブシャロムの監視の為に残し、アブシャロムを惑わす「アヒトフェルの助言を愚かなものにしてください。」(31)と祈り、知恵のあるフシャイを「アヒトフェルの助言を打ちこわす」(34)ために残すなど、ダビデは賢明な判断を忘れていません。ダビデとしては、息子をあくまで赦し、惑わしたアヒトフェルを失敗させれば方が付くと読んだのでしょう。歴戦の勇士ダビデは、経験も知恵も勇気もない人々がいくら掛かってきても負けるとは思わなかったのでしょう。
「アヒトフェルは、自分の助言が実行されないのを見ると、家を整理して首をくくって死んだ。」(17・23)。信仰者は、決して脆くあってはなりません。大事なことは負けないことであって、勝つことではありません。コロナウイルスに対しても、新しい情報が入ってきました。慌てて恐れ、巨額をつぎ込んだ政府は破綻することになります。
ダビデの将軍ヨアブは冷酷な人で、アブシャロムが木に引っかかってもがいているのを見て、すぐに殺しますが、自分が殺したことはダビデには伝えません。そして、息子の死を悲しんでいるダビデに対して、めそめそするなと伝え、その後自分に代わってダビデの腹心になろうとするアマサを騙して殺します。
ダビデは、自分の命を狙い続けた息子アブシャロムの死を嘆き、「我が子、アブシャロムよ。」と大声で泣き叫びます。皆さんならば、どのような感想を持つでしょうか。王位を継いだソロモンに対しても、甘さがあり、ソロモンは金と女で失敗をし、その知恵や能力を無駄にして、子孫を滅ぼしていきます。
「我が神よ。あなたは心を試される方で、真っ直ぐなことを愛されるのを私は良く知っています。私は、直ぐな心で、これらすべてを自ら進んで献げました。」(29・17)と祈り、「我が子ソロモンに全き心を与え、あなたの命令とさとしと掟を守らせて」(19)と息子に対する願いを祈りました。
ただ、私には、ダビデは息子に直接に訓戒を与え、厳しく指導し戒めるということはできなかったように思われます。戒めるということは、父親の役割です。自らが罪に対して甘かったら、子どもを戒めることはできません。母親は無条件の愛を現わし実践することが大事です。条件付けで、頑張ったら褒めるとか、良い子だったら褒める、ということは母には相応しくありません。父親は良い子でなかったら罰するという厳しさがなければなりません。夫婦は、共に相手とは違う役割を果たすことが大事なのです。
あなたがたはまだ、罪と戦って、血を流すまで抵抗したことがありません。そして、あなたがたに向かって子どもに対するように語られたこの勧めを忘れています。「わが子よ。主の懲らしめを軽んじてはならない。主に責められて弱り果ててはならない。主はその愛する者を懲らしめ、受け入れるすべての子に、むちを加えられるからである。」訓練と思って耐え忍びなさい。神はあなたがたを子として扱っておられるのです。父が懲らしめることをしない子がいるでしょうか。(へブル12・4-7)
Ⅱサムエル15章30~37節
- 15:30 ダビデはオリーブ山の坂を登った。彼は泣きながら登り、その頭をおおい、はだしで登った。彼といっしょにいた民もみな、頭をおおい、泣きながら登った。
- 15:31 ダビデは、「アヒトフェルがアブシャロムの謀反に荷担している」という知らせを受けたが、そのとき、ダビデは言った。「【主】よ。どうかアヒトフェルの助言を愚かなものにしてください。」
- 15:32 ダビデが、神を礼拝する場所になっていた山の頂に来た、ちょうどその時、アルキ人フシャイが上着を裂き、頭に土をかぶってダビデに会いに来た。
- 15:33 ダビデは彼に言った。「もしあなたが、私といっしょに行くなら、あなたは私の重荷になる。
- 15:34 しかしもし、あなたが町に戻って、アブシャロムに、『王よ。私はあなたのしもべになります。これまであなたの父上のしもべであったように、今、私はあなたのしもべになります』と言うなら、あなたは、私のために、アヒトフェルの助言を打ちこわすことになる。
- 15:35 あそこには祭司のツァドクとエブヤタルも、あなたといっしょにいるではないか。あなたは王の家から聞くことは何でも、祭司のツァドクとエブヤタルに告げなければならない。
- 15:36 それにあそこには、彼らのふたりの息子、ツァドクの子アヒマアツとエブヤタルの子ヨナタンがいる。彼らをよこして、あなたがたが聞いたことを残らず私に伝えてくれ。」
- 15:37 それで、ダビデの友フシャイは町へ帰った。そのころ、アブシャロムもエルサレムに着いた。
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