「若い頃の罪や過ちを忘れてください。」 詩篇25篇1~11節

前橋高校卒業50年の同窓会に参加しました。405名の内30名が死去しており、参加者は60名でした。実は、名前だけ憶えている人が3名で、顔は全くわからず、皆、おじさんになっていました。私はトランペットを吹いていたことは覚えられていて、ある人から「お前は突っ張っていた。」と言われ、そういえばそうだったかと思い起こしました。

写真を見ると、楽しいことや懐かしいことが思い出されます。ところが、何かの時に、昔の嫌なこと、バカなこと、恥ずかしいことが思い出されてきます。若い頃の恥や罪は山ほどあります。「穴に入りたい。」と思うほど、昔のことは知られたくないものです。豪雨の中を帰りながら、馬鹿な運転で起こした事故も多く思い出しました。「嵐が大好きだ。」という若者の言葉を聞きながら、嵐で苦しんだこと、怪我をした人を思い起こします。「一病息災」と病人を慰める人の言葉を聞きながら、一病で死んでいった人のことを思い出します。人間は、愚かで弱いものです。

若い時の失敗では、モーセを思います。王の子として育っていたモーセは、同胞のへブル人を助ける為にエジプト人を殺します。しかし、人が死ねば、その探索がされて他のへブル人に害が及ぶことは考えつかない世間知らずです。そして、モーセによる殺害が知られていることに気が付きミディアンの荒野に逃れるのですが、その時の焦燥感、切迫感、恐怖は如何なものでしょうか。その後、40年間に亘って羊飼いとして過ごすのは、その恐怖から逃れるものであったでしょう。

「私はいったい何者なのでしょう。ファラオのもとに行き、イスラエルの子らをエジプトから導き出さなければならないとは。」(出エジプト3・11)は、未だに戦いを恐れ、自らの行動に自信がない言葉です。二つのしるしを示されても、怖がるモーセは「どうか他の人を遣わしてください。」(同4・13Oと逃げようとします。

イスラエルの人々はファラオから厳しい命令が出るとモーセに文句を言います。するとモーセは「主よ、なぜ、あなたはこの民をひどい目にあわせられるのですか。いったい、なぜあなたは私を遣わされたのですか。」(同5・22)と神に苦情を言います。モーセは、「イスラエルの子らは私の言うことを聞きませんでした。どうしてファラオが私の言うことを聞くでしょうか。しかも、私は口下手なのです。」(同6・12)と神に苦情を言い続けます。

このモーセが奇跡を重ねるうちに、「主は、エジプトがこの民に好意を持つようにされた。モーセその人も、エジプトの地でファラオの家臣と民に大変尊敬された。」(同11・3)となっていきます。

新約聖書では、マルコを思います。マルコは、ペテロが牢に閉じ込められていた時に信者たちが集まって祈っていたマリヤの家の息子(使徒12・12)で、バルナバの従弟(コロサイ4・11)です。バルナバとパウロの伝道旅行に「助手として」(使徒13・5)ついて行ったのですが、魔術師エルマとの戦いに恐れてエルサレムに逃げ帰ってしまいました(同13・13)。次の伝道旅行にバルナバはマルコを連れて行くつもりでしたが、パウロは逃げてしまったような若者を連れて行くことはないと「激しい議論となり」(同15・39)、一行は二手に分かれました。

後に、パウロは「マルコを伴って、一緒に来てください。彼は私の勤めの為に役に立つからです。」(Ⅱテモテ4・11)と伝え、「このマルコについては、もし彼があなたがたの所に行ったら迎え入れるように、という指示をあなた方は既に受けています。」(コロサイ4・10)とわざわざ引き立てています。ペテロも、「私の子、マルコが、あなた方によろしくと言っています。」(Ⅰペテロ5・13)と、当時の使徒の間で役に立つ有望株として推薦しています。そして、このマルコこそが、使徒たちにイエス様の生涯を詳しく聞いて書き写し、聖霊によってマルコによる福音書を書き表したのです。

今日の詩篇は、若い信者の歩むべき道を示しています。「主よ、あなたの道を私に知らせあなたの進む道を私に教えてください。あなたの真理に私を導き教えてください。」(4.5)と、神に求めて前進することが大事です。人は誰でも失敗をし、愚かなことをし、恥をかきます。そして、多くの人は、その過去を言い繕い、正当化します。それは、自らの罪や弱さを認めずに、神の前に生きていることに気が付かないからです。

「主はいつくしみ深く正しくあられます。それゆえ罪人に道をお教えになります。主は貧しい者を正義に歩ませ貧しい者にご自分の道をお教えになります。」(8.9)。自らの罪に気が付かないで平然と生きている者に、神が道を教えることはできません。慈しみ深い神に気が付くのは、自らの罪深さを正当化せずに悔い改める人だけです。

詩篇25篇1~11節

  • 詩篇25:1 【主】よあなたをわがたましいは仰ぎ求めます。
  • 25:2 わが神あなたに私は信頼いたします。どうか私が恥を見ないように敵が私に勝ち誇らないようにしてください。
  • 25:3 まことにあなたを待ち望む者がだれも恥を見ずゆえなく裏切る者が恥を見ますように。
  • 25:4 【主】よあなたの道を私に知らせあなたの進む道を私に教えてください。
  • 25:5 あなたの真理に私を導き教えてください。あなたこそ私の救いの神私はあなたを一日中待ち望みます。
  • 25:6 【主】よ思い起こしてください。あなたのあわれみと恵みを。それらはとこしえからのものです。
  • 25:7 私の若いころの罪や背きを思い起こさないでください。あなたの恵みによって私を覚えていてください。【主】よあなたのいつくしみのゆえに。
  • 25:8 【主】はいつくしみ深く正しくあられます。それゆえ罪人に道をお教えになります。
  • 25:9 主は貧しい者を正義に歩ませ貧しい者にご自分の道をお教えになります。
  • 25:10 【主】の道はみな恵みとまことです。主の契約とさとしを守る者には。
  • 25:11 【主】よあなたの御名のゆえに私の咎をお赦しください。それは大きいのです。